歯の詰めモノが取れた。
近所で良い歯科医院はないだろうかと、インターネットで近所の歯科医院を検索してみた。
「削らない虫歯治療」
を謳う、東京都三鷹市の某歯科医院。ネットで検索すればすぐに出てくるでしょう。患者の立場に立った治療方針だとか、かなりの大風呂敷をネット上に拡げているので、信用して行ってみた。
で、
ようするに、
だまされた。
やけに人懐っこい、担当の歯科助手(もちろん若い女性)と、30分程度のカウンセリング、というか世間話で「客(主に男の?)の心をつかんだ」あと、
やっと現れた若い男性のセンセイからの治療計画の説明を聞いてみれば、なんのことはない、他の歯科医と同じことを言う。
教科書通り、つまり大部分の歯を「削って」「埋める」あるいは「被せる」と言う。そのためには17回程度は通っていただくとも。
ゲンナリ。そこで、せめてもの思いで、
「HPには、削らずに薬で患部を治療する方法があるとか書いてありましたが?」
と質問してみると、
「削るの
怖いですか?」
と逆に返された。
まさに、
広告に偽りあり。
早々に尻尾を巻いて退散してきた。
長年にわたり、東京都武蔵村山市に、僕がブラックジャック(以下、BJ)と崇める歯科医がいる。
とにかく本当に本当に「削らない」。
削って削って、これでもかと削って被せて詰めて抜いて、何回も何回も通わせる、所謂「営利主義」の歯科医が蔓延る中で、
本当に、本当に、なかなか探しても見つからない、貴重な奇跡の歯科医だと、僕は信じている。信仰している。
今回取れた詰めモノも、何事もなかったかのように詰めなおしてくれて、当たり前のように一回で治療は終わり。
ちなみに、先の三鷹市の歯科医は、同じ患部を「削って形を整えて、場合によっては神経を抜いた後で、銀歯を被せましょう」とのたまった。
この差は一体なんなんだ?と思い、初めてBJ先生に質問してみた。
僕「引っ越したので、いろいろ歯科医を訪ねてみるが、どこでも"削りましょう"とか、"被せモノにしましょう"とか言われるのですか?」
BJ「都心になればなるほど、患者が少ないので(歯科医院が多いので)、一人一人の患者に時間をかけたがる傾向はあります。僕の方針では、歯は削ったり神経を抜くほど弱くなるのでできるだけ削りたくないと考えます」
BJ先生は、ボランティアで、在宅老人の巡回治療も行っているそうで、現場主義の説得力を感じた。
僕の認識では、
「虫歯=歯の軟化現象」
正論(教科書どおり)では、「虫歯部分を削って詰める。それが神経まで達して痛むようなら神経を抜く」
とか、そういうことなんだろうけど、BJ先生には、その手前の段階として、
「着色していても、進行が遅ければ、敢えて人工的に削るべきではない」
という概念があるようだ。そして僕はその考え方に大いに賛同する。
現に、BJ先生の歯科医院に通って10年以上。普通の歯科医ならとっくに削っていたであろう箇所(茶色く着色している部分)は、10年経った今でも10年前と変わらないままだ。(見た目に美しいかどうかは別にしたとしても)
虫歯になっている部分を人工的に削ったところで、言い換えれば、それは虫歯が歯を侵すプロセスを、わざわざ人工的に助長しているだけとも言えると思う。
いたるところを何回も歯科医院に通って詰め物をしても、結局、きちんと歯の日常メンテナンス(歯磨き)が出来ていなければ、さらに虫歯の浸食は進む。
クルマのボディに例えるなら、細かいキズに、タッチペンばかりしてたら逆に目立ってしまうし、コンパウンドばかりかけまくれば、塗装が痛むし、結果的には再塗装までの期間を縮めることになる。こまめにワックス(この場合置き換えるとこまめな歯ブラシ)をかけているほうがよっぽど塗装には良い。
ようするに、教科書どおりに細かい補修ばかりするなってこと。
わざわざ人工的に、せっかく持って生まれた「歯」という唯一無二の財産を、無理やり削り取る必要はないということだろう。
「着色している箇所=削って埋めなきゃ」という考え方は、まさに正論を推し通す教科書通りであり、大学出たての経験の少ない、青臭い歯科医の方法論であると同時に、医院の営利にとっては、うってつけの考え方としか思えないが、どうか。
だから僕は、1時間30分かけても、BJ先生の元へ通う。
そしてBJ先生は、ほとんどの場合、一回だけで満足のいく治療をしてくれる。
BJ先生が現役を引退したら(遠い未来だと思うが)、または僕がもっと遠くに引っ越したら・・・
BJ先生曰く、
「出来るだけ"削りたくない"と、担当医に伝えるしかないね。そしてそれを聞いてくれる歯科医を見つけることだね」
削らない歯医者。本当に貴重な存在なのだ。
なぜなら歯科医は基本的に、
「削ってナンボ」
なのだから・・・。